前回の記事では、クァドリガがデザインされた共和制ローマ時代のコインを紹介しましたが、その記事の中で、イタリアのヴィットーリオ・エマヌエレ3世のことも少し触れました。
今回はそのエマヌエレ3世が作らせたクァドリガコインを紹介します。
1.スペック
- 発行国 イタリア
- 年号 1915年
- ミント ローマ
- 額面 1リラ
- 肖像 ヴィットーリオ・エマヌエレ3世
- 裏面 クァドリガ
- NGC MS64

2.イタリアクァドリガ銀貨
ヴィットーリオ・エマヌエレ3世は、自身もアンティークコインのコレクターであり、そのためデザインも秀逸なものが多いです。
その中でもクァドリガやビガなどは人気があります。
1リラ、2リレ、5リレのクァドリガと10リレのビガがありますが、特に5リレ銀貨は1914年の単年度、273,000枚のの限定発行で、かつ大型銀貨で見栄えもいいということもあって人気があります。
また、1リラ銀貨は1908年から1913年のものと1915年から1917年のものとでクァドリガのデザインが大きく異なります。
2リレ銀貨も同様に1908年から1912年のものと1914年から1917年のものとではデザインが異なっています。
どちらも前期のものは古代コインのクァドリガに近く、馬の描写(脚の並びなど)が不自然ですが、後期のものは非常に躍動感に溢れ、馬の肉体が今にも動き出しそうなほどにリアルなデザインになっています。
3.PROVA DI STAMPA
イタリアのクァドリガには試作貨があります。KMカタログにも掲載されていません。
イタリアのクァドリガ銀貨は例えば5リレであれば全273,000枚にすべて含まれますが、以下の種類があります。
- ・通常貨
- ・マットプルーフ貨
- ・マットプルーフ試作貨 PROVA
- ・マットプルーフ試作貨 PROVA DI STAMPA
1リラ銀貨や2リレにも同様に「PROVA」や「PROVA DI STAMPA」が存在しています。
今回紹介するコインであれば、このように刻印されています。

4.大手2社のグレーディング数
NGCとPCGSのこの1リラ試作貨のグレーディング数は以下の通りです。
グレーディング総数 | 63 | 64 | 65 | |
NGC | 1 | 1 | ||
PCGS | 2 | 1 | 1 |
と、2社合わせても3枚のみ、と言いたいところですが、実はNGCで同じコインのMS63が存在することを私は知っています。それがこのコインです。

「RPOVA」と記載されていますが、このコインの両面の画像がこちらです。

裏面を拡大してみると、、、

「PROVA」ではなく「PROVA DI STAMPA」と刻印されていますし、何よりも「PAGANI-259」は「PROVA DI STAMPA」です。
おそらく、このコインはかなり以前にグレーディングされて、初めてのコインだったので分類がうまくされていなかったのだと思います。
このコインを鑑定番号で調べても同じコインのグレーディング数もリンクしていません。
ちなみに、このコインは以前ebayで売られていたもので、その後国内のコイン商で販売されていたのを見かけたので日本国内にありそうです。
また、2社合わせてもトップのPCGSの65は以前AWに出品されていたことがあるので、もしかしたら全4枚中3枚はまだ日本国内にあるんじゃないかと思います。
結局、NGCとPCGSでは私が把握している限り以下の通り。
グレーディング総数 | 63 | 64 | 65 | |
NGC | 2 | 1 | 1 | |
PCGS | 2 | 1 | 1 |
おそらく発行枚数は100枚以下だと思いますが、正確な枚数はわかりません。グレーディング数はかなり少ないですが、イタリアのオークションなどではたまに裸のコインを見かけるので、それなりに数はあるのかもしれません。
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