今年に入ってからコインの価格が上昇しています。このことはコインを収集している人であれば実感していることだと思います。
今回は直近のオークション実績も含めて、そのことに触れたいと思います。
1.金価格の高騰からコイン相場の高騰
今年の初め、新型コロナウイルス感染症が世界中で流行し始めてから、まず金や銀といった貴金属価格が上がりました。
これに伴って地金型金貨や銀貨の価格も上昇しましたが、それに引っ張られるように地金型ではないアンティークコインの価格も上昇しました。
しかし、私の目から見るとその上がり方は異常です。
本来アンティークコインの価格というものは物価上昇に伴って緩やかに上昇するものですが、今年の上昇は物価とは関係なく、貴金属とアンティークコインがガツンと上げっています。
以前にも物価と連動した価格の上昇を説明しましたが、物価変動であればだいたい100万円で購入したアンティークコインが10年後には114万円ほどになっているという例を紹介しました。
現在の金利で考えてもそんなに利率のいい定期預金はありません。しかもアンティークコインは基本的には大きく値下がりをすることはありませんので、安全に価格上昇を見込める資産です。
しかも、何より、自分の趣味を大いに楽しみながら資産形成ができるというものです。
そのアンティークコインの相場の記事でもその後の記事でも、私はこのブログで再三、モダンコインの価格上昇の危険性を指摘してきました。
しかし、昨今のアンティークコインの急激な価格上昇を見ているとモダンコインだけではなく、アンティークコインも危険な感じがします。
2.ゴチッククラウンの価格
さて、そんな中、11月6日、7日の2日間にわたって開催されたアメリカのヘリテージオークションの結果の中からゴチッククラウンに絞って紹介します。
ゴチッククラウン アンデシモ PF61 手数料込み 9,000ドル
ゴチッククラウン アンデシモ PF62 手数料込み 10,200ドル
ゴチッククラウン アンデシモ PF63 手数料込み 22,800ドル
ゴチッククラウン アンデシモ PF63 手数料込み 36,000ドル
この価格を見て皆さんはどう感じるでしょうか?
さて、それでは日本国内の過去のオークション結果を調べてみます。例によって調べやすいAWの貨幣博物館からデータをお借りします。
まずはPR61から。
PR61 | PCGS | 2016年 | 576,160 |
PR61 | PCGS | 2017年 | 498,600 |
PR61 | PCGS | 2017年 | 531,840 |
PF61 | NGC | 2018年 | 509,680 |
PR61 | PCGS | 2018年 | 620,480 |
PF61 | NGC | 2019年 | 443,200 |
PF61 | NGC | 2019年 | 509,680 |
PR61 | PCGS | 2019年 | 666,000 |
PR61 | PCGS | 2020年 | 543,900 |
PR61 | PCGS | 2020年 | 555,000 |
まずはPR61ですが、正直に言って全く値上がりしていないことがわかると思います。概ね50万円から60万円が価格帯となっています。
今回のヘリテージオークションのPF61が9,000ドルですので、正直驚きの結果としか言えません。
さて次はPR62です。
PR62 | PCGS | 2017年 | 642,640 |
PF62 | NGC | 2018年 | 598,320 |
PR62 | PCGS | 2018年 | 642,640 |
PR62 | PCGS | 2018年 | 664,800 |
PF62 | NGC | 2019年 | 642,640 |
PR62 | PCGS | 2019年 | 648,180 |
PR62 | PCGS | 2019年 | 753,440 |
どう見えるでしょうか?やはりPR62でも3年ほどでの価格変動はないように感じます。概ね60万円から70万円が価格帯となっています。
今回のヘリテージオークションのPF62が10,200ドルでした。
次にPR63です。
PF63 | NGC | 2016年 | 842,080 |
PF63 | NGC | 2017年 | 797,760 |
PF63 | NGC | 2017年 | 775,600 |
PF63 | NGC | 2017年 | 975,040 |
PF63 | NGC | 2017年 | 1,218,800 |
PR63 | PCGS | 2017年 | 1,329,600 |
PR63 | PCGS | 2018年 | 963,960 |
PR63 | PCGS | 2018年 | 1,069,220 |
PR63 | PCGS | 2018年 | 1,218,800 |
PR63 | PCGS | 2020年 | 882,450 |
PR63についてはその時々の個体の状態などで価格差が大きいように見えます。概ね80万円から130万円が価格帯となっています。
今回のヘリテージの22,800ドルと36,000ドルという結果を皆さんはどう見ますか?
中には、いよいよアンティークコインブームの到来なんて騒いでいる人もいるかもしれませんし、アンティークコイン相場の適正な上昇だという人もいるかもしれません。
しかし、長い年月をかけてゆっくりと上がってきたアンティークコインの価格。それが崩れて急激に上がったとき、次に起こる現象は売却です。もちろん趣味で収集している人も資産として所有している人も、自分が購入した時期より急激に上がったらどう考えるでしょうか?
「これからもっと上がるかもしれない」と考える一方で、「こんなに急激に上がったらそのうち下がるから売るなら今だ」と考えて売却する人も多くなります。一定期間は売却したい人と買いたい人のバランスで高騰した価格は維持されるかもしれませんが、そのうち売却されるコインが増えると価格は必ず下がります。
そうやって、価格はバランスを保とうとします。
今回のヘリテージオークションはとても楽しみにしていましたのでライブで参加しましたが、あまりの価格の上昇ぶりに2日間結局何も落札しないという結果に終わりました。
もちろん欲しいコインが多数あったのですが、冷静に対処できたという満足感もあります。
今は、買い控える時期かもしれませんね。
そういえば、日本貨幣カタログの2021年版が届きました。
先日金融機関で交換したばかりの風神雷神も載ってますね。
artikel-88