以前、「ドイツ アンハルト=ベルンブルク 1846A TALER銀貨」の記事の中でこの「城壁の熊」について紹介したことがあります。
しかし、今回紹介するコインはある意味全く次元の異なるものになります。たまたまebayを見ていたら、アメリカのコイン業者でとんでもない数のドイツコインを出品しているショップがあり、そこで見つけてしまいました。
それがこの城壁の熊ターラー銀貨でした。
いやいや、そんなコイン別に珍しくもないじゃん、と皆さん思うでしょうけど、これはプルーフ銀貨なんです。
いったい何枚あるのかもわかりませんが、とにかく希少であることは間違いありません。
そんなわけで、一晩悩んでから購入。ちょうど1週間経った本日、手元に到着しました。
1.スペック
- 発行国 ドイツ アンハルト=ベルンブルク
- 発行年 1855年
- 額面 THALER(TALER)
- 重量 22.27g
- 品位 銀75.0%
- 発行枚数 不明(通常貨は20,000枚)
- NGC PF64 ULTRA CAMEO

2.アンハルト=ベルンブルク侯国
アンハルト=ベルンブルク侯国は、神聖ローマ帝国、ライン連邦、ドイツ連邦に属した領邦の一つであり、1252年から1468年、1603年から1863年まで存続していました。
ベルンブルク城では何か熊に縁があったようで、現在でも城内(現在博物館)に熊が飼育されているそうです。1800年代のアンハルト=ベルンブルクのコインには、この城壁を歩く冠をかぶった熊のデザインのものが多く存在しています。
3.城壁の熊ターラー銀貨
この城壁の熊のターラー銀貨は、通常貨ですと、各年号の発行枚数は以下のようになっています。
- 1846年 10,000枚
- 1852年 10,000枚
- 1855年 20,000枚
- 1861年 10,000枚
- 1862年 20,000枚
といずれも10,000枚か20,000枚の限定発行であり、状態のよいものとなると希少価値があります。
ちなみに、同じターラー銀貨でも、1861年と1862年のものについては重量と銀品位が他の年号とは異なりますのでカタログでも違うコインとして掲載されています。
さて、ここまでは通常貨の説明ですが、今回のコインはプルーフ銀貨です。城壁の熊のプルーフ貨は「Standard Catalog of WORLD COINS」には掲載がありません。
4.グレーディング数
NGCにおける通常貨各年号のグレードはこんな感じです。
(2020.12.4現在、MS60以上のみ抜粋)
MS61 | MS62 | MS62PL | MS63 | MS63PL | MS64 | MS65PL | |
1846 | 2 | ||||||
1852 | 2 | 1 | |||||
1855 | 1 | 3 | |||||
1861 | 2 | 5 | 3 | 2 | 1 | ||
1862 | 4 | 5 | 5 | 1 | 1 |
(2020.12.5 訂正…1862年MS65PLが「11」となっていましたが、正しくは「1」です。)
見ての通り、1846年、1852年、1855年に比べて1861年と1862年は高鑑定が多いことがわかります。
そして、前の3年号についてはPLが1枚もないのに、後の2年号がPLが存在します。それではPFはどうでしょうか。
(2020.12.4現在)
PF61 | PF64 UC | |
1846 | ||
1852 | 1 | |
1855 | 1 | 1 |
1861 | ||
1862 |
実際には、今回紹介しているPF64UCを検索すると「Not Available」と出て、同じコインはないように表示されます。
アンハルト=ベルンブルクの熊ターラーとコインの種類で検索すると、1852年と1855年のPF61が1枚ずつ存在していることがわかります。
しかし、このコインは「PF64」でしかも「ULTRA CAMEO」です。どれだけ希少か言わずともわかると思います。
(2021.2.24追記)
後日PCGSのサイトで調べてみたところ、PCGSには1855AのPR61が1枚存在していました。
さて、表の通り、PFは1852年と1855年しかないようです。(今回紹介しているコインと同じようにリンクしていないだけの可能性もありますが)
その逆で、PLのコインは1861年と1862年のみです。これって、偶然だと思いますか??
前期ではプルーフ貨を製造していて、後期の品位も変更になったものはプルーフ貨を製造しなかったのか。それにしてはプルーフライクの存在も気になります。もしかしたらですが、1861年と1862年のPLは、リグレーディングにでも出せばPFに昇格する可能性もあるのかもしれませんね。
5.プルーフ貨
NGCではプルーフ貨の場合は「PF」という表記になります。また、プルーフ貨にだけ「CAMEO」や「ULTRA CAMEO」が付けられます。
一般的にプルーフ貨は鏡面仕上げのように言われ、本当に鏡のような仕上がりになります。
見方を変えて数種類写真を撮りました。
①通常通り正面から撮影

②直接光が入るように撮影

③直接の光を遮断し、間接光のみで撮影

どうでしょうか?個人的には③が一番プルーフ貨らしく見える感じがします。②の光の反射具合もいいですが、PLでもこのくらいには見えますので、プルーフ貨のしかも「ULTRA CAMEO」の特徴は③なのかなと思います。
いくらプルーフ貨だと言っても、1800年代のコインで「ULTRA CAMEO」までついている銀貨なんて、至宝の存在だと思います。
ちなみに、より鏡面感をわかりやすくするためにドイツコインのカタログを映してみます。


どうでしょうか。ものすごい鏡面だとわかりますよね。
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