WAGで落札したコインが届いていました。
毎度のアンハルト=ベルンブルクの熊ターラーなのでコインの詳細は省きますが、今回はその状態やグレーディング依頼判断について少し紹介してみます。
1.コインの状態
今回届いた熊ターラーは全部で3枚、すべて年号が異なります。
①1846A

状態評価は「EF-」でしたが、まぁそんなところでしょう。
以前説明したこのコインの肝である熊の模様ですが、ネックとなる右肩あたりが少し摩耗しています。
数字がつくとしたら55~58くらいかなと思います。
ただ、全体的なトーンとは別に熊面の左下付近に緑色の付着物があります。
これは紛れもなく「PVC」です。
このままグレーディングに出しても「PVC」の「Detail」評価になると思います。
NGCに出すとすればNCS経由で除去できますが、果たして数字がついても55~58の熊にNCSの費用をかけるメリットがあるのか。
そこは当然「ない」という判断をしました。
②1855A

状態評価は「EF」でしたが、刻印なども摩耗具合は3枚中一番いいです。
しかし、洗浄跡があります。
特に熊の上の部分に完全に擦った形跡があるため、このまま出せば「Detail」評価となり数字はつかないと思います。
この場合はどうしようもないので裸で所持する1枚となりました。
状態はそこそこいいだけに惜しい・・・
③1862A

状態評価は「EF」です。
2枚目に比べると若干摩耗があるかなと思いますが、製造当時のラスターが綺麗に残っています。
数字がつくとすれば55~61程度かなと思います。
平地の状態だけで言えば62でもいいと思いますが、若干熊の右肩に摩耗が見られるので減点されるでしょう。
2.洗浄チャレンジ
1846Aのコインは、裸で所持するか、「Cleaned」にならない程度にPVCを除去できるかということになりますが、まぁどうせ裸で持つなら一度試してみようと。
※※注意※※ 絶対に同じ方法を試さないでください。(特に価値のあるコインは)万が一同じ方法を試してコインの価値が下がっても責任は取れませんので、もしやるなら自己責任でお願いします。
再度、1846Aの元の状態。

まずは、アルミ箔を下に敷いた容器にコインと適量の重曹を熱湯を注ぎます。
通常この方法で銀貨のトーンは取れてしまいます。
銀貨のトーンは空気中の微量な硫黄成分による硫化が原因です。
重曹はその硫化を解きます。アルミ箔を一緒に入れるのは、銀よりもアルミの方が硫化しやすいため、銀貨に付着していた硫黄成分による硫化を解き、それをアルミ箔に移すためです。
※※注意※※ この方法は銀貨オンリーです。銅貨の変色を除去するためにこの方法を使用しないでください。
数時間重曹で硫化を解いてみたコインがこちら。

トーンが少し落ちて、それと一緒に緑色のPVCもただの黒色になりました。
しかし、これでもまたPVCになる可能性があります。
そこで、次はどの古銭屋でも売っている昔ながらのコインクリーナー液に浸けてみます。
数時間後の状態がこちら。

もっと完全にピカピカになるかと思いましたが、ほどよくトーンが残り、PVC跡も消えました。
少し傷が目立ってきた感じがします。
硫化などで細かな傷は目立たなくなりますので、その硫化を解くと傷が出てきたりします。
トーンの強いアンティーク銀貨などは特にそうなる可能性があるのでNCSなどの鑑定会社による洗浄でも数字つきだったものが「Deteil」評価になってしまうこともあるようです。
ついでにNCSなどの鑑定会社による洗浄・修復はモダンコインであればかなり綺麗になります。
アンティークコインでも元々ほとんど変色しない金貨であれば有効です。
しかし、トーンの強い銀貨などは隠れていた傷が出てきてしまうことがあるので、注意が必要です。
さて、話を戻して、
後はこの液体が完全に表面から消えるようにしばらく水に浸けておきます。
ここで擦ったら間違いなく「Cleaned」になりますし、洗浄の薬品がコインに残っていても「Detail」になる可能性があります。
最後に、
しつこいようですが、、、
本来自分で洗浄することは本来ご法度です。
自分で洗浄を行うと数字がつくものも数字がつかなくなる可能性がありますのでご注意ください。
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