アンティークコインの基礎

金価格のコイン市場への影響

最近の国内オークション、海外のメジャーオークションを見ていると、アンティークコインもモダンコインも値上がりしています。ここ最近は金だけではなく銀やプラチナなど、貴金属全般が値上がりしているので、その地金としての価値の上昇も影響していることは間違いありません。では、地金価格がコインの価格にどの程度影響しているのでしょうか。

一つの例として、モダン金貨で検証してみようと思います。


アメリカ 2009年 ウルトラハイレリーフ 1オンス金貨


この金貨は、一時、ものすごく人気があり、価格も上昇しました。日本国内でも将来有望だとこの金貨ばかり売っていたコイン業者もあるくらいでした。

コイン自体はとても素晴らしいです。管理人もMS70PLのものを1枚所有しておりますが、普通の金貨にはない彫の深さで何とも言えない高級感があります。さて、それではどのような値動きをしているでしょうか。

国内オークション大手のオークションワールドの貨幣博物館と直近で開催された泰星誌上オークションの価格を一覧にしてみました。


日付 鑑定会社 グレード 付加要素 落札額
2016.1.31 PCGS MS70 Edmund.C.Moyサイン 398,880
2017.10.14 NGC MS70   332,400
2017.10.14 PCGS MS70 M.Mercantiサイン 292,512
2018.4.21 PCGS MS70   221,600
2018.4.21 NGC MS70   226,032
2018.4.21 PCGS MS70   228,248
2018.7.14 PCGS MS69PL   210,520
2018.7.14 PCGS MS70   210,520
2018.7.14 PCGS MS70 Edmund.C.Moyサイン 226,032
日付 鑑定会社 グレード 付加要素 落札額
2019.7.20 PCGS MS70   214,952
2019.10.19 NGC MS70   209,790
2019.10.19 NGC MS70PL Early Releases 331,890
2020.1.18 PCGS MS70PL M.Mercantiサイン 421,800
2020.4.18 PCGS MS70   244,200
2020.7.18 PCGS MS70   310,800
2020.8.10 PCGS MS69   313,020
2020.8.10 NGC MS69   316,350

ウルトラハイレリーフで市場に回っているものとしては、MS68以下のものもありますが、ほとんどはMS69以上のもの(PL付含む)になります。その中でも「FIRST STRIKE」、「Early Releases」、「サイン入りスラブ」などの付加価値がついたものがあります。

特にMS70PLでサイン入りのスラブは一時かなりの高値で取引されていました。

さて、付加要素のついたものは除き、比較的サンプルの多い「MS70」で価格の動向を見ていきます。そのときの金価格、コイン自体の地金価格、そして落札金額から地金価格を引いた金額(地金ではなくコインとしての価値)も算出しています。


日付 落札額 金価格(g) 地金価格 落札額-地金価格
2017.10.14 332,400 5,118 159,170 173,230
2018.4.21 221,600 5,037 156,651 64,949
2018.4.21 226,032 5,037 156,651 69,381
2018.4.21 228,248 5,037 156,651 71,597
2018.7.14 210,520 4,903 152,483 58,037
2019.7.20 214,952 5,364 166,820 48,132
2019.10.19 209,790 5,740 178,514 31,276
2020.4.18 244,200 6,455 200,751 43,450
2020.7.18 310,800 6,926 215,399 95,401

2018年4月31日はMS70の取引事例が3件あるので平均値をとって、地金としての価値を抜いたコイン自体の価値をグラフ化してみるとこんな感じになります。

落札金額-地金価格

一時期、人気があって値上がりしたときは、地金価格よりもコイン自体の価値があるとして取引されていましたが、その熱が冷めてしまうと一気に「地金+α」の価格にまで下がっていることがわかります。

金価格の高騰により、ここ最近ウルトラハイレリーフの落札価格は上がっていますが、地金価格を抜いて、コイン自体の価値という箇所だけに絞って金額を算出してしまえばこんなものだということです。

とはいえ、管理人も所有している金貨の中でもお気に入りの1枚ですし、とても魅力のある金貨です。冒頭で説明したとおり、その彫りの深さ故のデザインの素晴らしさは、一度手にすると病みつきになるかもしれません。


さて、今回はここ最近の金価格の高騰が、コインの価格にどの程度影響を与えているのか。地金価格を差し引いた「コインの価値」という一面で計算した際に、どのくらいの価格であるのか、価格変動はどのようになっているのかを見てみました。

この先、まだまだ金価格は上がるのでしょうか?それともここらへんで止まるのでしょうか?少し戻るのでしょうか?特に金価格によって大きく価格が変動するモダン金貨を購入する際は、是非今後の金価格の動向を予測して購入された方がいいのではないかと思います。



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サミー
アンティークコイン収集歴はまだ浅く、日々勉強中です。 このブログは自分の備忘録として、そしてアンティークコイン収集をこれから始めようとする方の参考になればと思います。