まずは、冒頭でお断りしていきます。私は趣味でアンティークコインを収集しています。このため、資産運用のプロでも何でもありません。そのことを常に頭に置いて読んでいただければと思います。
1.資産の種類
資産形成として様々な種類を選択できる世の中になりました。世の中の投資家も日々それらを研究し、最適な資産運用を目指しています。資産としてはどんなものがあるでしょうか。
預貯金、保険、国債、社債、金銀プラチナ等貴金属、不動産、株式、投資信託、外貨、骨董品、仮想通貨、先物、FXなどなど
仮想通貨や先物取引、FXはご存じのとおりハイリスクハイリターンと言われています。
株式や社債、投資信託も世界情勢や景気などにより大きく変動することがあります。つい最近でも新型コロナウイルス感染症の影響で株価は大きく値を下げました。
不動産についてはバブル時代からの地価の暴落、震災や津波後の海岸近くの地価の暴落もありましたし、アパート経営なども入居率や修繕などのリスクは常について回ります。
預貯金は一定金額までは保証されますし、安全性から言えば最も安全な資産といえますが、現在は超低金利時代です。定期預金ですら金利0.02%なんて時代です。資産の現状維持はできますが、運用とは言えません。
そこで注目されているのがアンティークコインです。
2.なぜアンティークコインなのか?
上記のとおり、預貯金などは現状維持がいいところで、資産運用には向きません。しかし、先物取引やFX、仮想通貨などはハイリスクなので、それなりの覚悟を持って資産運用しなければなりません。
ではアンティークコインはどうなのか。
先に断っていきますが、当ブログはアンティークコインの素晴らしさを(主に趣味としての収集)をお伝えするためのブログですので、資産運用の手引きでも勧誘でもありません。
後ほど、アンティークコイン投資のリスクも説明しますが、最終的には個人個人の判断です。
さて、資産運用には預貯金のようなローリスクローリターンのものもあれば、先物取引や仮想通貨のようなハイリスクハイリターンのものまであります。
しかし、実際は誰もがローリスクハイリターンのもので資産運用したいのです。では、世の中で、安定的に価格が上昇するものって何でしょうか?預貯金は金利によって、確実に少しずつはあがりますよね。
ちなみに、例えば100万円金利0.02%の定期預金に10年間預けるといくらになるでしょうか。
答えは、1,002002円です。実際には税金が引かれるので通帳に残るのは利息で1,500円ちょっとです。
100万円を10年も預けてもこれだけです。
さて、預貯金以外で安定的に上昇しているものって他に何があるでしょうか。それは物価です。
一つの商品だけを取り上げると、技術の進歩や量産化によって価格は下がることはありますが、全体の流通価格を長い目で見ると、物価は必ず上昇します。
いろんな商品や料金がありますが、公的なものということで、一つハガキの郵便料金の変遷を見てみます。正確には郵便料金は「物」ではありませんが、世の中の物価の影響を受ける公的なものとして例に挙げます。

このように、確実に右肩上がりで上昇しています。しかし、高度成長期などに一気に価格が倍になったりしているので、もう少し直近(平成元年以降)の価格変動だけを取り出してみます。

より変動幅は小さくなりましたが、確実に上昇しています。約30年で1.5倍ほどになっています。
これは金利で考えると1.4%です。
100万円を金利0.02%の定期預金に10年預けていたときは、税引き前でも1,002,002円にしかなりませんでした。しかし物価上昇率の1.4%で考えると、10年で1,149,157円になります。
アンティークコインは、(一部使用できるものもありますが)お金として利用できない「物」です。このため、物価の枠で考えることができます。通常、何らかの「物」を購入した場合、時間が経過すればするほど、その価値は下がります。「物」は経年で劣化しますし、技術の進歩で最新の物が登場します。一度他人の手に触れた「物」を嫌う傾向もあります。
しかし、骨董品は別です。時間の経過によって、むしろ価値は上昇することもあります。アンティークコインは、この骨董品としての「物」なのです。
それでは骨董品なら何でもよいのか?
骨董品にも多くのジャンルがあります。パッと思いつくところでは、陶芸品や絵画、掛け軸などがあります。
しかし、これらはまず場所をとります。そして損傷のリスクがあります。陶芸品は落としてしまうと割れてしまいます。絵画や掛け軸はしっかり光や湿度など、適切に保管していないと色褪せやカビなどで損傷することがあります。
この点、アンティークコインはとても小さいので場所もとりませんし、適切に保管さえしていれば損傷することもありません。特に最近ではスラブケースに入ったコインが主流ですので、落としてもコイン自体にはキズがつきませんし、変色も最低限に抑えられます。(銀貨などは変色を好むコレクターもいますので、変色を止めてしまうことが一概にいいこととは言い切れません。)
3.アンティークコイン投資のリスク
また、アンティークコインでも資産運用として考える場合、以下ことを忘れないでください。
1)アンティークコインといえどもノーリスクではない
アンティークコインを販売している業者などは、いいことしか言いませんが、アンティークコインにもリスクはあります。まず、アンティークコインに価値があるのはその希少性があるからです。
例えば世界に現存1枚しかないと言われていたアンティークコイン。コインの種類にもよりますが、その希少性からオークションなどでも高値で落札されることが多いです。しかし、歴史的な大発見でもしそのコインが一気に数枚、数十枚発見されたらどうなるでしょう?当然1枚しかないと思われていたコインの価格は暴落します。
2)すべてのアンティークコインが資産運用に適しているわけではない
概ね100年以上前のコインをアンティークコインと呼ぶのであれば、その種類は20万以上と言われています。
ではどんな種類はアンティークコインの資産運用に適しているのでしょうか。
まず、アンティークコインの市場価値を決める三大要素があります。過去の記事「アンティークコインとは?」でも書きましたが、次の3つです。
①希少性
アンティークコインがただの古いコインとしてではなく、価値あるものであるためには、希少性が必要です。
世界中で〇枚しかないコインという言葉に魅かれるのです。
このため、世界中に何十万枚も残存しているコインでは、いくら古くてもアンティークコインとしての価値の上昇は大きくは見込めません。
②状態
古いコインですから、その長い期間の保管状態によってコインの状態も様々です。普通に貨幣として流通していたものであれば、当然摩耗していますし、流通せずにコレクターによって保管されていたものは新品同様で残っています。
当然、同じ種類のコインであれば、流通して摩耗しているものより、大事に保管され未使用状態のものの方が価値は高くなります。
近年では鑑定会社のグレーディングによる状態の数値化によって、その価値の差はより明確に、より大きくなっています。
特に希少性の高いコインのMSグレードは価格上昇率もAUレベルのコインより高く、MSグレードの中でも最高鑑定や準最高鑑定などは価格の上昇率がとても高いです。
③人気
これは希少性や状態のようなコイン自体の問題ではありません。言ってみれば人の趣向です。国、年代、デザインなどによってコレクターの人気は集中することがあります。
言い返してみれば、どんなに希少性が高く、状態のよいコインであっても、欲しい人がいなければ値はつきません。逆に、欲しい人が多数いれば値段は吊り上がることが容易に想像できますね。
ただ闇雲にアンティークコインを購入すればよいというものではありません。この三大要素を常に考えながら購入しないと資産運用としては失敗する可能性があります。
ちなみに、私の場合、もちろん自分の持っているコインは将来値上がりしたら嬉しいですから、多少はそのあたりも考慮しますが、多くの場合、好きなデザインのコインを収集するようにしています。
他の人がどう思おうと、価値が上がらなくても、趣味で収集しているのですから、自分が好きなデザインを鑑賞したいですし、逆に将来性があるからといって、好きでもないデザインのコインを手元に置いていても、それはただの投資になってしまいます。それは、私の本来のアンティークコイン収集とは目的が異なってしまいますので、できれば、自分の好きなデザインで、かつ将来性のあるコインなら一番いいですね。
3)モダンコインも資産として有効なものもあるが、アンティークコインよりリスクは高い
①モダンコインバブル
さて、アンティークコインだけではなく、モダンコインにも触れておきます。私のブログを見ていただければモダンコインも多く入手していることがわかると思います。
さて、モダンコイン、特に1950年以降くらいに発行されたコインであるにも関わらず、とても値段が吊り上がっているコインがあります。まだ2000年以前のコインで発行枚数が相当少ないものであれば何となく理解もできますが、この数年で発行されたコインが発売されてから一気に5倍10倍の価格に上昇しているものについては、疑問しかありません。
ちなみに、ウナとライオンのデザインは世界中で人気がありますが、特に日本では人気が高いです。
例えば、スイスの現在射撃祭でウナとライオンがデザインされたものがありました。すべて枚数限定発行ですが、銀貨で言えば、最高鑑定の70クラスで一番高いときで30万円近くまで上昇しましたが、直近のオークションでは手数料込みで20万円は切っています。
その他、昨年末に発売されたイギリスロイヤルミントのウナとライオンなんかも発売後1か月で裸でも数倍、PR70がついた銀貨などは約10倍の値段で売られていました。現在では落ちてきましたが、特に日本人はこういった人気のあるモダンコインに飛びつきがちです。みんな飛びつくからどんどん値が上がっていきます。しかし、一旦ブームが過ぎると手放す人が増えてどんどん値段は下がっていきます。これがモダンコインの怖さです。こういうコインは数年待ってから購入することをオススメします。
②地金型金貨
これはモダンコインだけではなく、アンティークコインでも言えることですが、例えば金としての地金だけの価格で20万円の価値がある金貨があったとして、コインとして取引されている金額が22~25万円ほどのものがあるとします。
言ってみれば、コインの希少性やデザインとしての価値が2~5万円しかないということになります。こういう金貨の場合、金価格がそのコインの相場に大きく影響します。
最近では金価格も高騰していますが、金価格も下がる可能性もあります。コインの価値も下がることもある上に金価格にも左右されることになると、要は二重に不安定な要素がある資産ということになります。
ここまで金価格に左右され、ほぼ地金の価格で入手できる金貨を購入するくらいなら金を地金のバーでも購入した方がいいかもしれません。
この点、地金価格だと20万円の金貨でも相場500万円のものであれば、金相場なんて全く影響を受けません。最近では上がっている銀であっても元々の価格が低いため、アンティーク銀貨は銀価格によってそれほど影響を受けません。
4.まとめ
アンティークコインは物価の影響を受ける「物」なので、物価と共に価格も上昇することが見込めます。
しかし、物価は短期的に見てもそこまで上下するものではなく、長い目で見ると緩やかな右肩上がりになっているものなので、アンティークコインの値上がりには最低でも10年くらいの期間で見る必要があります。それよりも短期間(1年や2年)で急激な価格変動があるコインは人気の部分だけで急騰してしまっているコインなので、その後下がるリスクもあります。
上記のように短期間で価格が急騰するコインは危険ですが、その他のコインであても人気の部分が価格に大きく影響するので、熱が下がれば価格も下がるリスクはあります。
モダンコインは特に瞬発的な人気で一気に価格が上昇して、またゆっくり下がるという傾向がありますので、購入するタイミングは慎重に。
地金価格+αのコインは金価格の影響を受けやすいのでアンティークコイン投資には向きません。それなら金投資と変わりません。
アンティークコインの価値を決める三大要素、「希少性・状態・人気」を考え、しっかり知識を入れてから購入することをオススメします。
できればモダンコインではなくアンティークコイン、三大要素を考慮したコイン選び。
あとは急激な価格変動に惑わされずに緩やかな物価上昇に任せて放っておけば10年後に価格が上昇している、それがアンティークコインの魅力です。
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